先の総選挙で与党が、衆院2/3超の議席を維持したのを受け、景気回復条項が外れ、2017年4月の10%消費増税へむけ、成長戦略の推進がほぼ確実的になりました。

そこで、中小企業への支援をしてきた中で、感じることを綴りたいと思います。

以前のブログでも意見や予測を綴ってきましたが、第一の矢(大胆な金融政策-日銀主導)、第二の矢(機動的な財政政策)が、賛否はあれど遂行されてきております。そして、規制緩和などによる民間投資を期待する成長戦略の第三の矢の今後になります。

第一、第二の矢により、円安や株高の現状は数年前とは雰囲気は違うのは確かです。しかし、8%に増税したあとの7-9月のGDPは-1.6%(年率計算)になりました。この結果を受けての10%への増税延期を決定したというのが、現状です。
確かに、2000年前後までに国際分業体制を整えた大企業は、円安の恩恵を受けている輸出業は伸びていませんが、それに該当しない大企業は円安、株高により、恩恵を受け続けています。

しかし、中小企業・諸規模事業者はどうでしょうか。私は、地方の中小企業を周る中で、今回の恩恵がいつくるのか、そして、それは本当に来るのか。を分析しています。内需型の中小企業にとって、円安はマイナス要因の方が多いといえます(原材料価格が上昇する為)。企業の社長や担当者、会計士、金融機関と対応をねる中で、従来保有していた資産(株、資金等)をやむを得ず売却している中小企業は少なくありません。もちろん、大企業のグループとして存在している中小企業はこればかりではありません。

こういった二極化が進んでいる現実の中、今現在円安・株高で恩恵を受けている企業はほんの一部であり、企業支援の中で作成する3ヵ年計画の書面上では可能になっていますが、実際、賃金上昇や雇用を増やすことが実行できるとされる中小企業は稀少であるといわざるを得ない現状がみてとれます。

役所の方やシンクタンクの勉強会でも「金融円滑法」(業績立て直しや企業再生を目的とされた法律)の話題が出ますが、共通認識事項として、40ヶ月返済負担を軽くできますが、40万社が利用企業であり、実際に計画通りに進んでいる企業は10万社の現実があり、ほとんどの企業が存続が厳しいのです。計画をきちんと実行できるものにしてあるのかどうか、そういったコンサルや専門家の指南を提供できる環境が整備されていなかったことにも原因はあります。
本当に、下請け、孫請けの中小・小規模事業者は作業時間はかかれど、利益に還元できていないのが現状であり、多少の還元があったとしても企業主は、企業を守ることを優先するため、社員にどれだけ還元が回ってくるか想像がつきます。

ここにきて、国は事業再生だけに集中せずに転廃業勧奨、そして女性・シニアの創業に政策転換して雇用を維持拡大したい構えのようです。

私は、国の政策にまた地方の企業がおんぶにだっこのままでなく、どうその制度、法律を解釈し独自性をだしていけるかという、気持ちにしていかなくてはならないと思います。日本は、資本主義社会を選択しています。努力をすれば報われるということです。私は、所得格差が拡大する中、セーフティネットは必要だと思いますが、「誰かが、何とかしてくれる。行政が、政治が助けてくれる。会社が何とかしてくれる。」といったお任せ主義的な行き過ぎた依存心は、結果として地方の衰退だけに留まらず国を弱体化させてしまうと思います。官に依存しない自立した経営体の集積こそが地域を強くすると確信しています。

私は、制度の問題は国にあれど、地方の中小企業・諸規模事業者や、そこに勤務する方は、経営者マインドや自社の経営方針・計画といったマネーリテラシーを身につけ、キャッシュフロー経営を実践することが活性化につながると提言したいと思います。こういったマネーリテラシーの向上とアベノミクスは車の両輪であり、経済教育・経済リテラシーと経済政策が一体となり、初めて中小企業の活性化に繋がると言えます。

温かくも強い社会にするためにも、そんなことを考えた今回でした。

                       若狹 清史