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「基軸」

現在、世界経済がEUを中心に動きを見せている中で、アジアも着々と戦略が練られているように感じています。今回はその中で、日本はどう戦略をもっていくべきなのかを考えたいと思います。

1980年代から日本の輸出企業を中心として目指していた「円の国際化」、「基軸通貨化」があります。今日までの結果としては、これらは実現せずに、現在は過度の円高によって大変苦しんでいるといえます。

しかし、昨年来協議を続け、12月に日中間での合意事項に金融・経済協力があります。それが形となった6月1日、円と元の直接取引が東京と上海でスタートしました。従来、元と直接取引をしていた通貨といえば、米国ドル、マレーシアのリンギット、ロシアのルーブルのみです。(非公式で北朝鮮もあるのかもしれませんが・・・)
今回、世界主要通貨(ドル、ユーロ、円)の一角である、「円」が「元」と直接取引を始めた意義は極めて大きいと考えます。政冷経熱とはよく言われますが、表裏一体の中でこの機は色々な意味を込めて活用していくべきだと思います。

そもそも、今回の円元直接取引は双方にとって大きなメリットがあります。

まず、日本にとっては、「円の国際化」に繋がる可能性を秘めているからです。1980年以降失敗に終わっている施策ではありますが、今回の円元直接取引によってうまれる潜在的可能性を利用できるかです。

同時に、元取引推進を各国に呼びかけている中国ですので、諸外国との競争への布石でもあります。そもそも、元の大きな市場は香港のみです。香港支店経由の元取引は複雑かつコストが高いため、敬遠されがちです。
既に英国はロンドン市場と香港市場を連携させた市場開設を計画し、ロンドン証券取引所で点心債(元建て社債)の発行も始まりました。シンガポール、EU、タイ、インド等続々と今後も中国に市場創設の容認を求めてくることは想定できますし、日本も同様にどんどん強気で、円元直接取引での競争相手を先行し、東京市場創設を推し進めるべきだと思います。

次に、中国にとっては、政治リスクの回避です。従来は、元はドルを介してしか主要通貨に変換できませんでした。ですので、米国の経済戦略の片棒を担ぐような立場にもあったことは周知のことです。ですから、今回の円元直接取引によって、米国の外交政策次第でドル取引の封鎖を例え行われたとしても、ドル以外の主要通貨との変換ができることでは、大きな展開といえるでしょう。

同時に、経済リスクの回避にも繋がります。現在、中国の外貨準備は3兆ドルを超すといわれ世界第一位です。貿易黒字とドル買いの結果だとは思います。(日本の対中国貿易額は約28兆円にもおよび、2000年と比べても3倍近くにまでなっています。)しかし、リーマン・ショック後のドル下落で評価損を抱え込み、為替リスクを体感している中国としては、貿易のドル決済比率を低下させ、貿易黒字によるドル増加の抑制を企図していますので、今回の日中協力は極めて前向きな展開といえます。リーマン・ショック以降、中国は「ドル外し」戦略を高らかに推進しています。元による貿易決済を認め、昨年には全貿易に占める元建て決済比率は10%を超えました。世界各国に通貨交換協定を呼びかけ、立場確立を急いでいます。

そして、中国が狙っているであろう「元の国際化」です。これは前述しましたが、日本が1980年代から目指してきていることです。現在、日本を抜いて経済規模で世界二位の中国です。その二位の元が三位であり主要通貨である円と直接取引をしていけば、自ずと円元決済比率も高騰し、元の価値が高まってくることを想定しているでしょう。
もちろん、この点は日本の円にも同様の効果がありますが、円は既に主要通貨であるため、元の得るメリットのほうが計り知れないものになると予測できます。

日本と中国の双方のメリットもあります。
私たち旅行者にとってもメリットになる、為替手数料軽減です。
従来の、一旦ドル交換後、相手国通貨をしていましたので、為替手数料を二度支払った形になっていました。これが、一回で済みますし、事務コストも軽減されるでしょう。これにより、企業顧客はレートも有利にいくでしょうし、旅行者の往来増加も期待できます。
また、為替リスクの軽減が期待できます。ドル相場に惑わされることがありませんし、元建て金融商品が普及したり、元建て債券等も発行できれば、企業にとってはやりやすくなるでしょう。

今回、私は米国時代の関係者に一連の動きをどう見ているのかを聞いてみました。
米国は意外と太っ腹かつ、冷静に見えていないマイナス点も指摘してくれました。

「今回の、円元直接取引を黙認しているのは、中国が為替や資本取引の自由化を進めても、国際金融市場には暗黙のルールがあり、例え影響を受けたとしても基軸通貨ドルの影響下に置かれることは間違いない。なので、元の国際化や基軸通貨化が進んでも、ドルの影響下のことになるのだから、問題ないんだよ。世界主要各国は米国の外交戦略を軸に、政治経済外交軍事など総合判断しているので、今回の流れに、どこも黙認しているんだよ。」
との見解を出してきました。(もちろんこれは、私の知り合いの関係者達ですので、一意見にすぎません)

同時に「円元直接取引が活発化した時に、元がドル、ユーロ、円と並ぶ主要通貨となった暁には、円が埋没するリスクがあるから、そこの日本の対策が大事ではないか」との指摘も。その通りですね。何をしでかす国か、わかりませんし、感情論をみても合わない政治事情もありますから。

私は今回、この円元直接取引の機を無駄にすることなく、大きく活用してきながらも、緊張感をもった日本の戦略を明確にしていく必要性があると考えます。

そもそも変動相場制もドル本位制も、100年も適応していません。ポンドからドルへ。ドルから円なのか元なのか。この流れを日本がどう真剣に考えるかです。中国は本気でしょう。為替戦争で負けないためにも、AMS(アジア通貨制度)なども視野に議論していかなくてはなりません。何でもかんでも日本は、外国との取り決めを拒否していることが、「保守」ではなく「固守」なんだと改め、勝負していくべきです。それが本来の保守です。

ドルオンリーの流れの転換をめざしたユーロは欧州財政危機の中で悲鳴をあげています。しかし、相対的に安定した地位にある円と、これから伸びてくる元の直接取引は私は、ドルに対しても一定の影響を与える可能性をひめていると思います。

今回の為替変動幅3%の円元直接取引は、79年のEMS(欧州通貨制度)創設、加盟国相互の為替変動幅を2.25%以内に抑える枠組みでスタートしたユーロ導入に似た形にも見えます。今後、韓国ウォンも参加した日中韓の直接取引が可能となれば、ASEAN諸国も参加する可能性が高いと言えます。
為替リスクにだけ振り回されないような工夫や関係を構築することの議論を深めていくことで、AMSやIMFの通貨引出権を含めた、国際的な経済政策に一石を投じることができ、経済大国日本への復活、またそれが国内における繁栄にも繋がると思いますので、攻めていくべきではないかと感じています。

ギリシャの再選挙では、EUとIMFと合意した緊縮策を支持する新民主主義党が勝利しました。左派連合は再選挙の現実を受け入れたことを受けて、欧州危機は一端の落ち着きをみせるかと思います。しかし、次はスペインなど問題は山積している間に、イニシアティブをとっていかなければと思った今回でした。

                               若狭 清史